聞けば先月の末で会社を解雇になったという。しかも自動車関連、まさにニュースのあれだ。
地元の博多に戻ってきて、就職活動中という彼はちょっとだけ冴えない表情で現状を話してくれた。詳しく聞けばかわいそうだなと思うところもあるが、でもこの時期にその会社の判断も致し方ないとも思う。気に入った商品があったらしく早速試着して購入の意図を確認。就職活動であってもこちらは商売だ、もちろん気持良く買ってもらうことにこしたことはない。
「これにする?」「はい、おねがいします。」「○○円です。支払いは、現金?クレジット?」「クレジットでお願いします」「回数はどうすると?」「ボーナス払いでお願いします」
嘘やろ、きみ就職活動中でしょ?ましてやボーナスって...
複雑な思いをこらえながら無事決済完了。正直、思わず笑ってしまいそうになってしまった。非常に不謹慎ではあるがこのやり取りでまだまだ日本はそんなに悪い状況ではないような気がします。数字でみると悪いんですが、クビになってる本人たちが割とあっけらかんとしてるので僕は安心したのも事実。こんなときこそ開き直ってじっくり物事を見つめることも出来るはず。
かわって違う日。今度は二人組の若者が来店。後輩の紹介できてくれた。一人は大学を卒業してはれて地元の企業に就職が決まったという。来月からの仕事始めに向けて引っ越しやらして心機一転といったところ。相方の方は就職浪人中で来年の就職に向けて面接の毎日という。で、就職決まった友人の買い物についてきた。すると就活中の彼の携帯に2次試験合格の連絡がある。さっきまで暗かった彼の表情は一変してハイテンション。買い物にきた友人も一安心する。「俺が受かったら、お前の後輩になるんかいな?」「そうやろ、俺には敬語で話せよ」「うわっ、いややね〜」とか冗談言い合いながら買い物して帰る間際に2次に通った彼が、「就職決まったら買いにきます!」と。ありがたい。
そういう意味では、僕らが商売としているお洋服はとても贅沢なものなんです。必要でなければ買わなくても生活は出来ます。でもこうやって苦しいときこそ自分の為にお金を使ってくれるお客様がいてくれることも事実です。そして元気になってくれるのであれば本望です。欲しいけど買えないからがんばってまた来ますと言われれば、うん待っとるね、そう思います。
年に1回も行かないキャバクラで店長の方に言われました。「僕らは社会の潤滑油なんです。肉体労働の方も会社の役員の方も来られますが、疲れた折れそうな心を明日に向かって優しく潤してあげること、これだけです。」そういう存在になれると良いなあと心底思うこのごろです。
Go Fujito